2020年度 京都市立芸術大学 作品展
とおりぬけるかおり
2021
目を開いて窓を開ける きっと絵の向こうに見えるのは壁でなく 見つめあう行為は瞳を見ることではないのでしょう 手のひらはタブローにパステルをのばし、あなたの頬を撫でる 指先はわたしの瞼をなぞり、隣りあう色をこすって混ぜる 身体に宿るそれぞれの体温は、外の空気と拮抗して 他者に触れて授かった体温は、身体の芯まで侵食していく 冷えきった綿布のうえを、温もった手についた小さな粒たちは走る 眠るころ 熱はゆっくりと身体の内から末端へと放たれ 手に灯るわずかな体温は、隣で眠る他者へと授けて 窓を閉め目を閉じる